みぞぐちクリニック BLOG

2014年2月23日 日曜日

胃の痛みに安中散

なんとなく春の雰囲気が漂う日中でしたが、まだまだ夜は寒いですね。
さて、今日は「安中散」について書いてみます。

今回の患者さんは、近隣に住む70代後半の男性の方です。
高血圧で心筋梗塞の既往があり、数多くの薬を内服しています。
今まで市立病院に通院していましたが、自宅近くにみぞぐちクリニックが開院したと聞いて来院してくださいました。

主病の経過に問題はなく、市立病院での処方を継続するため、今後は当院をかかりつけ医としたいとのことでした。
ただし、しばらくは市立病院にも数か月に1回通院したいとの意向もあるため、当院は何かあった時の相談役のような立場を請け負うことになりました。

例によって今までの病歴をじっくりと聞いていましたが、最後あたり「おや?」と思わせるような症状をお話になられました。

聞くところによると、数年前から深夜3時ごろに決まって胃の痛みで目が覚めるとのことでした。

もちろん、市立病院の先生には相談済みで、これまでにも様々な胃薬を処方されていたようです。
内容をみると「逆流性食道炎」を念頭においた処方のようでした。
最近では「プロトンポンプ阻害剤」と呼ばれる最強の制酸剤を就寝前に内服していましたが、一向に効果がないとのことでした。

半ば習慣化し、半ばあきらめていたこの症状に対して、私が処方したのがこの「安中散」です。

ほかの薬はそのまま継続したうえで、「安中散」を1包だけ就寝前に飲んでいただきました。

そして2週間後の再診時のこと・・・・・

患者さん「あのー、不思議なんです。」

私「えー、何がですか?」

患者さん「あんなに苦しんでいた夜中の胃の痛みが、最近全くないんです。」

私「!」

患者さん「なんで、こんなに良くなったんでしょうねぇ?」

私「まぎれもなく、安中散のおかげですよっ!」

これまた、クリーンヒットです。

ただし、実を言うとこのケースは「変化球だけど振ってみたらバットに当たった」みたいなケースなのです。

というのは、通常安中散は「体質的には虚弱者、すなわち痩せ型の胃下垂体質で、冷え症、疲労しやすいもの」を対象として処方されることが多い、いわゆる「虚証」用の漢方薬なのです。

今回の患者さんは、比較的がっちりとした体格の見た目は「実証」のような方でした。
ただし、高齢であることに加えて慢性疾患をお持ちですから、それだけでも「虚証」寄りなのだと思います。

この安中散という漢方薬には「延胡索(えんごさく)」という生薬が配合されており、これが鎮痛作用を発揮します。
月経痛にもかなり効果がありますので、月経困難症の女性にとっても強い味方になります。

ちなみに、典型的な「実証」である私にも胃痛時の際には「安中散」が著効してくれます。

漢方薬はときどき見た目の「証」に関係なく効果を発揮するときがあるので、柔軟な思考が必要だ、というお話でした。





 


 

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2014年2月20日 木曜日

2014年診療報酬改定には、びっくりしました!

ここ龍華町周辺では、インフルエンザもやや下火になりました。ちょろっとインフルエンザB型が流行っています。

さて、今回の話題はこの4月から改定される「診療報酬」についてです。一般の方には馴染みのない言葉ですが、われわれ医療従事者、ことに経営者にとってはかなり大切な事項です。

これはいってみれば、医療の「メニュー表」で、保険診療における医療行為の値段を決めているものです。
今回の改訂では、消費税8%への変更に伴い初診料などがアップとなりました。
アップといっても、われわれが仕入れる医療材料なども3%アップになるので、利益が増えるわけではありません。

それよりも衝撃的だったのは、「在宅診療」に関わる部分です。
一般の方のイメージだと「在宅診療」は、医師が一件一件患者さんのご自宅に伺って診療するスタイルを想像されると思います。
確かにそのスタイルが多くを占めているのですが、近年はそれだけでなく、マンションなどの集合住宅に訪問するスタイルが効率の面からも好まれるようになりました。

「サービス付き高齢者住宅」いわゆる「サ高住」への訪問診療です。

診療を行う医療機関側にすれば、一件一件回るよりも、同じ建物内を回診するほうが、多少一人あたりの診療報酬が低くても一日の売上が大きくなります。
これを目論んで、集合住宅への在宅訪問診療をメインに開業されたドクターも増えてきていました。

具体的には、月2回訪問診療をおこなったとすると・・・

一般の居宅への訪問診療・・・・月5万8600円/件
集合住宅への訪問診療・・・・月4万6000円/件

・・・が、基本的な料金です。

集合住宅のほうが低料金ですが、移動時間を考えると一日に診療できる人数に大きな違いがあります。
一般居宅10人にかかる時間で、集合住宅なら40人は診察できます。

これまで集合住宅の訪問診療中心で経営してきたクリニックは、かなりの年収を上げておりました。
言い方は悪いかもしれませんが、まさに「金の成る木」がそこにあったのです。

しかし、今度の改正では「適正化」が図られることになりました。

今度の報酬体系では、な、なんと、集合住宅への訪問診療は「月1万2060円/件」への大幅減額です!

4月からは同じ診療内容であっても、診療報酬は4分の1になります。

これまで年間1億円の売上げだったのが、ことし4月から2500万円と強烈な減額となります。

普通の会社なら、潰れますね。

みぞぐちクリニックは集合住宅への訪問診療は行っていませんので、全く関係がありませんが・・・

とはいえ、厚生労働省の容赦のない強攻策には驚きます。

この減額が、「集合住宅からの訪問診療撤退」の流れにつながり、日本各地に「医療難民」が生まれないことを切に願います。













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2014年2月 1日 土曜日

咳と高熱のウイルス感染に「五虎湯」

ただいま全国的にインフルエンザが流行っていますが、今回は高熱の続くウイルス感染の一例をご紹介します。

患者さんは6歳の女の子。
先日、お母さんに連れられてぐったりとした様相で来院されました。
経過をお聞きすると、4日前から突然38度以上の高熱と咳で発症されたようです。
発症当日に受診した耳鼻科ではバナン(抗生剤)と咳止めを出されたそうですが全く効果がなく、翌日に他院小児科を受診されました。
そこでの院内迅速検査で溶連菌感染は否定され、さらにインフルエンザを2度も検査しましたが、これまた否定されました。
小児科の先生はバナンからセフゾンへ抗生剤を変更し、さらに咳止め効果のあるオノンを処方されました。
ところが全く効果が見られず、咳はますますひどくなり、全身状態は悪くなる一方でした。
そして発症から4日目になって、当院を受診されたのです。熱はまだ38度以上もありました。
症状経過から推測すると、経口抗生剤の効かない重症肺炎が疑われましたので、まず胸部レントゲンをとってみました。
画像では左下肺野にうすい浸潤影らしきものがありますが、肋骨と重なりはっきりしません。(この時点で重症肺炎は否定です。)
ならば、今度は採血で炎症反応(白血球数とCRP値)を見ることにしました。
採血の時には、彼女は怖くてワンワン泣くものの、体に力が入らないのかぐったりとして抵抗しようとはしません。
かなりの重症感です。
ところが結果は「白血球は正常範囲、CRPは軽度上昇」で、意外にも「ウイルス感染」と判明しました。
この時点で抗生剤治療は全くの無効であると判断しましたが、「さて次にどうするか?」と思案しました。
大人であれば、「抗炎症剤の点滴でストーンと熱が下がって楽になる」パターンですが、子供さんの場合はお母さんの意向もあり、大人と同じ点滴治療ができないことも多いのです。この子の場合もそうでした。

では、どうしたのか?

処方したのは「五虎湯(ごことう)」です。
体重が18kgぐらいのお子さんでしたので、お母さんに一袋の半分(1.25g)を3時間おきに3回連続して飲むように指示しました。
解熱剤は一切効かないことがこの4日間の経過でわかっていましたので、今回は処方せず、五虎湯にすべてを託して翌日再診としました。
もし熱が下がらなければ、翌日総合病院に紹介して入院してもらうつもりでした。

そして、翌日。
クリニックのドアを開けて入ってきたのは、一晩ですっかり元気を取り戻したその女の子でした。
昨日とは全く別人のようです。
お母さん曰く、「五虎湯を飲んで一回ほど吐きましたが、その後熱がストーンと下がりました。朝起きてみると4日間ほとんど食べられなかった子が、『おなかがすいた~』といってホットドックを一つ食べました!」
まだゴホゴホと咳が残っているようでしたので、一袋を朝夕にわけて飲むように3日分処方し、帰宅となりました。
うーむ、五虎湯くん、いい仕事してくれましたね。

五虎湯には、麻黄(まおう)も結構含まれていますが、何よりも石膏(せっこう)が多く含まれています。
石膏には熱を冷ます力がありますから、麻黄と相まって最高の力を発揮したようです。
そしてもう一つの構成成分である桑白皮(そうはくひ)は、鎮咳作用もありますが、味を飲みやすくする役目も果たしていますので、咳と高熱が続く子供さんにはもってこいの漢方薬です。

今回のような素晴らしいヒットがあるから、私にとって漢方はなくてはならない存在なんですよね。

レッツ、ドゥ、カンポー!

 


 

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